お題 “バレンタインデー”
 

「歌声に、想いをのせて。」


Written by ながたかずひさ



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2月13日、日曜日。
デパートの地下一階、バレンタイン商戦最終追い込み、ひと、ヒト、人。

「どれもこれも、天下の志保ちゃんのバレンタイン用としてはいまいちね〜」

ふらふらと冷やかして歩く志保。今日はもちろん、一人。

「……チョコはダメねぇ。どーせあかりは凝りに凝りまくって、低周波治療器も効かないような
手作りチョコでしょ?プラスして……手編みのセーターぐらいは覚悟しなくっちゃねー。
 ……勝てっこないじゃん!」

一人自嘲って、肩をすくめる。なんたって、クリスマスには手編みのマフラーだもんね。

「チョコ以外のお菓子とか、ハンカチなんかの小物とか、ちょっと変わったプレゼント……
 だめねえ、そんな金で片の付く話は、来栖川姉妹の独壇場だわ……」

歩みを進めて、いつしかお菓子売場が終わる。お酒売場。

「うん、ちょっといけない子のフリをして、ワインとかね。……酔わせて迫っちゃったりして〜
 ……だめ、智子とか得意そう。相手のフィールドで勝負しちゃダメッ!胸のサイズじゃ
負けないけどッ!」

熱、こもる。

「雛山とかも!すぐにそういう手使ってきそうだし!貧乏だからって!
 葵ちゃんも要注意よね!直球で押せば物事全て解決すると思ってるんだから!
そーわ世の中甘くないわよッ!
 あーっもう!直球といえばレミィ!あいつも真っ正面からパワー戦ばっか!でもあなどれない!
銃持った親父がバックにいるし!
 それからあとは琴音ッ!そう、あれが一番問題よねーっ!あーの仮面娘、いざとなったらどんな
汚い手でも使ってくるに決まってんだから!」

ヒートアップして最後絶叫。
はー、ぜー、はー、ぜー。

肩で息するセーラー服の女子高生。
3m離れて、ぐるりを人垣。

「やーねー、なにあれー」
「気合い入りすぎよねー」

キッ!
刺すような一瞥を陰口の方向へ向ける。

……ならやってみなさいよ、この立場ッ!気合いだって入るってのよッ!

また、人垣が割れていく。


 §


あの……告白のブランコ以来、ヒロとはうまく……
うまく……
……
行ってるのか行ってないのか、自分でもよくわかんないのよね。
たぶん、ヒロにも。

いままでとおんなじ日々が、また続いた……
だけ。
そりゃ、よーくよく見れば、ちょっとだけ、うん、ほんのちょっとだけ、
ヒロの眼が、優しくなったような、そんな気もするわ。
いつも力一杯叩き合っていた軽口、80%ぐらいでやめてくれているような、
そんな気も、する。
でもあくまでも、「気も、する。」
二人きりでデートも、何回か、したわ。
でも。
でも未だに、その……キスもしてないし。

彼氏彼女と言ってもいいのか、って言われると、アタシだって困るわよ。

なによりアイツの周り、相変わらずの美少女ハーレムだし。
……なによなによなによ、でれでれでれでれ鼻の下のばしっぱなしにしちゃってさ。
休み時間中右へ左へお花畑のミツバチみたいに飛び回っちゃってさ。
アタシは、十把ひとからげの一人ってわけ?
あかり、智子、雛山、レミィ、先輩、綾香、琴音、葵、それからマルチ。
アタシを入れて、丁度十人。

「は!よくできた洒落ね〜〜〜!」

ひとりおどけてつぶやいてみる、夕焼けの帰り道。
石ころ、ひとつ、蹴飛ばして。

「ヒロ……の、バカ……」


 §


いつものコンビニで、イチゴオーレでも買って帰ろう。
暗惨たる気持ち。結局、プレゼント、決められなかった。
明日。
もう日はないのに。
冗談で、すませられるかな?

「……ガッカリしてくれたりしたら……ちょっと嬉しいかも……」

無理矢理いいように想像して。
でも、出るのはためいき。
「もういいわ……」
身も心もくたびれ果てて、扉を押し開ける。
いつもは15分かかる目的の棚への道のり、今日は15秒。
イチゴオーレを取り出して、レジへ……

「あー、こんなのでヒロくんのはーとをげっとするき?
 それちょっとひっどーい!
「ばかぁ、ばれんたいんは、こころよこころ!
 はーとがこもっていればなんだっていいのよ!なんだって!」

ふと見る、特設バレンタインコーナー。
と、小学校……上級生になるかならないかの女の子たち。おませ盛り。

……そーね、アタシもあんな頃は、もっと楽しくさ……

「だからって10円チョコはひどすぎるよ〜
 もうちょっとマシなのにしなよ〜」
「い、いいのっ!
 これであいをたしかめるのよっ!」

自然、頬が緩む。
いいなあ、子供は……アタシなら、悪質な冗談としかとってもらえないだろうな……

……はーとがこもっていれば、なんだっていいのよ。

……そう、なんだって、いい。
何か贈るなら、大切なのは、気持ち。
気持ちがこもっていれば、こころがこもっていれば、ハートがこもっていれば。
なら。
なら、あなたにできる、一番気持ちのこもった贈り物は、なに?
志保?


ぶん!
凄い勢いで左手の時計を見る。いや、見なくてもわかってる。
あと、半日。

やったことすらない。
できる自信なんか、ない。

でも、もしダメでも。
できなかったとしても、それで明日、惨めな想いをしたとしても。
これが一番、素敵な気がする。
どうしても、どうしても、これじゃなきゃいけない気がする。

やるっきゃないじゃない、志保。

そう、結論なんかわかってる。
こぶし握りしめ、イチゴオーレをレジのお兄さんに投げ返して、家路を走る。

”アタシの最高の贈り物、見ーつけたっ!”


  §


14日、月曜日。
いきなり朝から靴箱作戦机作戦でヒートアップしてるフィールドもあれば。
昼休みにお弁当攻撃にでるゾーンもある。
だがしかし。
浩之ハーレムの強者どもは、慌てふためいて小技を弄するようなことはなかった。

志保のプレゼントもなんとか間に合った。
ほとんど、寝てない。
でも気が張ってるから、全然平気。
とっておきの贈り物を贈るチャンスをうかがう。

”放課後、かな……”

もとより承知。ただ、できれば二人きりがいいな。
ヒロ以外に人がいるのは、ちょっと恥ずかしい。
でも、放課後は競争率高そう……というより、列、できるんじゃないの?

ちょっと間抜けな風景を想像して、その最後尾に自分を置いてみる。

バカ、そのもの。
思わず吹き出す。
”かっ、かっこわるぅう!”

”……でも、それにしても動きがなさすぎるわね。”
おかしい。
何がおかしいって、あかりですら、ぽっけーっと構えて……いや、「構えてない」ことで。
そもそも、でっかいスポーツバッグから、リボンにくるまれた手編みのセーター、という
予想が軽やかに外れた。いつもの制鞄、ひとつ。

会話の中にも、不自然なほど、バレンタインのバの字もでない。

でも敵情をおもんばかってばかりでも、作戦はすすまない。
周りはどうあれ、アタシはアタシ。
放課後を、待つ。


 §


がたん!
ホームルームが終わるのをじりじりと待って、飛び出す。ヒロの教室へ。
駆ける途中、また思い出す、アホ行列の絵面。
ぶんぶん!
かぶりを振りながら、たどりつく教室に……

ヒロは、一人。
それも、なんとなく、元気なさそう。

「あ、あれ?ヒロ、ひとり?雅史は?」
「あ、ああ。雅史は……女の子の大波にのまれて、いっちまったよ……」
「惜しい人を亡くしたわね。」
「”まさし”く。」
ていうかヒロ、おかしくない?
「……で、あかりは?」
今日ばかりは触れたくないが、触れぬわけにいくまい。
「……あー、用意があるとかなんとかで、ダッシュで帰った。」
「用意って、なんの?ダッシュって、あかりがぁ!?」
「知らん……オレは何も知らん……」

やっぱりおかしい。
でも、そんなこと詮索してるヒマはない。

「じゃ、あんた、一人で帰るの?」
「不本意ながらな。」
「葵ちゃんや琴音ちゃんが校門あたりで待ってますぅ、じゃないの?」
「それは……たぶんない。」
「来栖川家の黒服が拉致に来るって可能性は?」
「それも、たぶんない。」
「雛山やレミィが大陸間弾道弾のように飛んでくるってことは?」
「あー……それも、ないだろうな。」

あれ?
なんか、拍子抜け。

「なになになになに、天下のプチ・ドンファン藤田浩之様が、このビッグ・イベント、
 う゛われんたいんでゅえーに一人とぼとぼとぼーって家路を歩くの!?
 あーっはっはっはっは!
 日頃の行いのツケが回ってきたわねえ!」
「うっさいなあ……そーゆーもんでもねーんだよ……」
「それに何よ、さっきからそのシケた面!
 そんな顔してちゃ折角の男前が台無しよん?」
「……いいよな、お前は。いつもノーテンキでさ。」
「ノーテンキでおーいに結構!
 ……っじゃ、そーんな可哀想な浩之クンに、志保様が愛を恵んであげようかしらん?」
「いらねーよ、別に。」
「またまたーそんな無理しちゃってー!」
「どっちかというと志保様の愛を恵まれる方が無理してるな。」
「つべこべ言わずに!来なさいー、ほらーっ!」
「いて、いててて、ひ、ひっぱるな耳、耳!バカ!ちぎれるっつーの!」


 §


「なんだよ、いつもの公園じゃねーか。
 こんなとこまで志保様に回り道していただかなくっても……あー……
 なんかくれんなら、学校でいーじゃねーかよ。」
「あ……
 あはははは、それがそーゆーわけにも、いかないのよ。」
「なにぃ?
 学校には持ってこれねー危険物でなのかっ!?
 爆発物?猛獣?大量のマッチ!?」
「違う違うちがーう!
 もう!アンタも少しは真面目になんなさいよ!恥ずかしいからって茶化さないでよ!
 アタシだって恥ずかしいんだから!」
「そ、そんな意識してたって仕方ねーだろ!ほれ、出すもんさっさと出せ!」
「な、なによそのスケベな言い方!
 ……その……あの……チョコじゃないのよ……」
「やっぱ、爆発物か?」
「ちがーうってばぁ!……モノでもないの……」
「じゃ、じゃあ何だってんだよ!
 『アタシをあげる〜〜〜』なんてネタはいいんちょだけで充分だぞ!」
「そんなこと言ったの!?智子!?また男物のワイシャツ!?」
「ちゃうちゃう!今のはオレの妄想!」

ぱっこーん。

「鶴来屋」と書かれた緑のビニールスリッパにて。

「あっててて……お前、ビニールスリッパはマジで痛いって!」
「ばかぁ!」
志保、珍しく本気。
「……」
「……」
「……わ、わりぃ……ちょ、ちょっとふざけすぎた……すまん。」
しっかり見つめる、真剣な眼差し。
この瞳に、弱い。
「き、気をつけなさいよね……志保ちゃんだって、傷つきやすい……乙女なんだから……」
「あ、ああ……」
頬を掻く浩之に向き直って。
「じゃあ、アタシからのバレンタイン・プレゼントでーす!」
「お!待ってました!」
二つの笑顔が向き合って。
「それじゃあ、浩之さんには、手拍子をお願いしま〜す。」
「え?なんだよ手拍子って……」
「いいからいいから!ほれ、いつものカラオケみたく!」
「あ、ああ、じゃ……」
ぱん、ぱん、ぱん、
「あ、あ、あ、あ〜〜〜ちぇっくちぇっく」
ぱん、ぱん、ぱん、ぱん、ぱん、ぱん、ぱん、ぱん


ら〜ららら〜〜らら〜ら〜〜ららら〜〜〜

ハミングで調子。

そして流れ出す歌声。
夕陽を背に、志保が歌う。

瞳を閉じて。
微笑みのまま。

それは、ラブソング。
オリジナルの、志保のこころを描いた、ラブソング。

「あ……」

それは、贈り物。
浩之の心を満たしたい、その気持ちで一杯の、贈り物。

驚きの表情だった浩之も、やがて眼を閉じて、
聞き惚れる。
夕陽の柔らかなひかりが、志保の身振りにかすかにさえぎられながら、
まぶたの裏に届く。

夢のように。
子守歌のように。

詩を味わう余裕もなく、調べに身を寄せるいとまもなく。
ただ、まごころの奔流に、のまれた、まま。


……


「ど、だった!?」
えへへ、照れ笑いの志保。
「あ、ああ……」
あはは、そして照れ笑いの、浩之。
「オレ、生まれて初めて、歌で感動したぜ?」
「ほ、ホント?」
「畜生、志保に感動させられるとは、藤田浩之、一生の不覚だぜ!」
「な、何よそれー!」
「ええい!それぐらい良かったってことじゃねえか!
 めっちゃめちゃ褒めてんだよ!!くそ!」
ぐ、と袖で目元を拭うのを、見逃す志保ではない。
「あー!何よ、あんまり感動して、泣いちゃったってわけ〜!
 あー志保ちゃんってばやーっぱり、罪な女ね〜!」
「うっさいなあ、自分だって目の回りボロボロじゃんかよ!
 ウサギみてーに赤い眼しやがって、
 『ヒロの前で自作のラブソング歌えるなんて感激〜君に届けてれぱしー』
とか酔っぱらってたんじゃないのか!?」
「な、なによぅ」
「な、なんだよ……ず、図星か?」
「……う、うん……」
「え、えーっと」
ぐず。
ちょっと違う涙が、また、志保の眼を覆いかける。
「だぁーっ!
 なんだよなんだよいつの間にそんな泣き虫になっちまったんだ、ええっ!?
 マルチウィルスかなんかがうようよしてんのかこの辺はぁ!」
「……ぐじっ……」
「あああああ悪かった悪かった、いや、本当に感動したんだってば……」

エネルギー全部、歌に叩きつけた。
もう、ぜえーんぶ空っぽで、いつもの軽口もでてこない。
だから、何も言えなくて。
決して怒ってるわけでも、悲しんでるわけでも、ないのに。
そしたら。

ちゅっ。

涙でゆがんだ視界には、何がなんだかわからなかった。
けど、それは、たぶん、ううん、絶対、
ヒロの顔。

「あ……」

瞬きして涙落とすと、優しく微笑む、ヒロの顔。
「機嫌、直せよ、志保。
 ありがとうな、ほんとに。
 オレ……すごくすごく、嬉しいよ。
 ありがとう。」

わぁあ

また涙で、溢れる涙で見えなくなる。もっと見てたいのに。いつまでも見つめてたいのに……
「う……ん……
 喜んで……もらえて……よかっ……た」
それ以上、何も言えない。
ヒロの……
大好きな人の胸に、顔を埋めて、泣いた。
気持ちのいい涙が、頬を濡らしていく。
そのことが、こんなに気持ちのいいものだなんて。
このことが、こんなに嬉しいことだなんて。

ヒロ、大好き。

こころの中でつぶやく。口には出さない。
だってもうさっき、精一杯、歌ったもん。


 §


「この歌詞の……『公園』って、ここか?」
「そうよ。で、そこのサビを、こう、びぶら〜〜〜とで〜〜〜」
「なんかココ、聞いたことあるようなメロディだな……」
「う、うっさいわね……だって……はじめてだもん、歌創るのなんて……」
「そっか。そだよな。へへ、わりいわりい。」
「もう……」
穏やかで優しい時間が過ぎていく。
いつまでもこうしていたい……肩に回してくれている、ヒロの大きな手を愛おしげに触りながらそう思う。
でも、まだ冬の落日は早い。そして、寒さも。

「……あのな、志保。」「……あのね、ヒロ。」
「あ、なんだよ、言ってくれよ。」「え?なに、言ってよ。」
……
「あーあのな、なんだ、えーっとその……
 すごーく言いにくいことなんだけど……」
「な、なに?なによ?」
「今日はバレンタイン、だよな。」
「そう、よ。」
「でもってプレゼントに、歌、創って、歌ってくれたんだよな。」
「そう、よ?」
「で、もういっちょついでに……お願いしたいことがあるんだけど……聞いてくれるかなーって……」
「な、なによアンタらしくもない、その『お願い』って!」
「いや、オレの……家に来て欲しいんだけど。」

かぁあああああああああああああああ

寒さを吹き飛ばして顔が紅潮していく。
「ばっ、ばっ、ばかあ!
 あ!や!ばかっていうのはあのいやっていうんじゃないんだけどでもばかあ!
 ア、アタシそんな……あああ、あのあのあああの」
「まっ!待て志保!
 違う!違うんだ!」
「へ?」
ポコポコ殴られる下から、浩之の声。
「いや!その!おめーを家に連れ込んでどうこうとか!
 そんなことは思ってない!いや!思ってないと言えば嘘になる!
 あいや!じゃなくて!今日はそうじゃなくて!」
「な、なんなのよ、じゃあどうして家へ来いなんて……」
殴るのをやめると、浩之はたたずまいを直す。
「すまん。」
「え?え?え?」
「別に言っても言わなくてもいーことだと思ってたから、言わんかったが。
……今日は夜、家にあかりが来る。」
「ふええ!?」

な、なんという失策。
ぬかった。
そんな可能性ぐらい、最初の最初に考えるべき。それであの、クソ余裕。「帰って準備」に
あかりダッシュ。
本丸への直接攻撃。あかりなら十二分にとりうる戦法。
に、しても。

「ヒ〜ロ〜」
「違う違う!違うんだって!話はまだある!」
「は?」
「いいんちょも来る!」
「……さ、三人で!?アンタ達、いつの間にそんなことに……」
「違うって……」
浩之、がっくし。
でもすぐにぐん、とおもてを上げて、
「それどころか!」
「わ。」
「琴音ちゃんも!葵ちゃんも!芹香先輩も!綾香も!レミィも!理緒ちゃんも!」
「……
 ……マルチはこないの?」
もう、ツッコミの方向性も定まらん。
「いや、昨日の夜から今日に備えて来てくれてる……」
「……だけ?」
確認。
「……セリオも……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「なんじゃそりゃーっ!
 なんか変なパーティでも目論んでるのアンターッ!」
「違うっつってるだろ!
 あのなあ!みんななあ!あの手この手でバレンタインってことがバレないようにアポとるし!
 あかりなんか三ヶ月も前から!
 『2月の第2月曜日って暇だよね?だったらこの日、特売やってるから晩ご飯作ったげる!』
 とか!綾香なんか!
 『2月の2回目の月曜日、ウチでパーティやるのよ。美味しいもの食べれるから、来ない?って、
 あたし退屈だから話し相手が欲しいんだけど。迎えに行くから!』とか!」
涙目で訴える浩之。

……いっしょじゃん。
というよりどー考えても、ヘラヘラヘロヘロOKだしまくるアンタが悪い。
とゆー眼でじとーっ。

「だから、悪かったって……反省、してる……」
うなだれる。
でも実際、このままじゃ藤田家は大惨事そして第三次世界大戦勃発の地として、世界中の教科書に
永遠に載ってしまう。
「よーするに『助けて志保ちゃん』って状態なワケ?」
「そのとおりっ!」
「威張るな、バカ!」

ったく、だから教室でのあんな受け答え。そして憂鬱な面もち。
今日になって気づく?フツー!?

「『ったく、しょーがねーなー』ってヤツね〜
 わかったわ!
 実はみなさんをお呼びしての「びっくりバレンタイン大パーティ」を内緒で企画してましたぁ!って
ことにでもしましょーか!」
「そんなシンプルな作戦で上手くいくかぁ?」
「この土壇場で他にどんな作戦があるってのよ!
 後はこの志保ちゃんの舌先三寸胸突き八丁よ〜ん。」
「なんだそりゃ〜。」
「ほら!そんなことより早くしなきゃ!仕掛けも何もできないわよ!」
「おう!そうだな、急ぐか!」
「レッツらゴー!……あ、ちょい待ち!」
「うん?なん……」

ちゅっ。

「……あ」
志保、駆け出す。
「ホワイトデーは、高くつくわよ〜〜〜ん!」
「……ああ、いいぜ!たっぷり『仕返し』してやる!」
「『お返し』よ!バカ!」
「バカバカ言うなジョークじゃねーか、バカ!」
「バカバカバカバカバカヒローッ!」
「バカバカバカバカバカシホーッ!」

日暮れの街、走る長い影と思いっきりの笑顔二つ。
BGMは、あのメロディー。




-----了




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