Episode:オールキャスト?(ToHeart)
「本日のお題」第15回遅刻参加作品(苦笑)

 

「例えばこんなヴァレンタインとか。
その1−『風邪、時々ヴァレンタイン』−」


Written by Holmes金谷



  − 1 −


 2月14日。
 その日は、朝から天気が良かった。
 ・・・が、オレは起き上がる事ができなかった。
 なぜなら・・・。

 ぴんぽーん。
『浩之ちゃ〜ん、朝だよ〜』
 玄関で、あかりが呼んで居る声が聞こえて来る。
 が、オレの何も考えられない頭は、その声を素通りさせて居た。
『もう、しょうがないなぁ〜』
 そう言って、家の中に入って来る音がする。
 最近、あかりはオレが起きて来るのが遅いと、部屋まで起こしに来るようになって居た。
 まあそれはそれでありがたいのだが、この前は着替えて居る最中に上がって来て、慌てて着替えたと言う事もあった。
 が、今日はそんな事すら出来そうにも無い。
 こんこん。
『浩之ちゃん? 入るよ?』
 がちゃん。
「あ、何だ、起きてるじゃないの。浩之ちゃん、早く学校に行こうよ」
「・・・スマン、あかり・・・オレ、今日学校休むわ・・・」
 やっとの思いで絞り出した声。
 あかりも、それを聞いて異常を察知したらしい。
「浩之ちゃん、もしかして・・・」
 そう言って、おでこに手を当てる。
 ・・・ああ、あかりのてがひんやりして居て気持ちいい・・・。
「・・・! 凄い熱・・・。浩之ちゃん、カゼひいちゃったの?」
「ああ、どうやらそうらしい・・・スマンが、HRの時に伝えといてくれ」
「あ、う、うん・・・じゃあ、私帰りにまた寄るね」
「・・・スマンな」
「ううん、いいよ。それより、今はゆっくり寝て早く治してね」
「・・・ああ、そうする・・・」
「それじゃあ・・・」
 ぱたん。

 そのまま、オレは目を閉じた。
 月曜日から風邪引きなんて、ついてねぇなぁ・・・。


  − 2 −


 ・・・・・・。
 ・・・。
 どのくらい寝ていただろう。
 オレはふと、下の階から聞こえて来る物音で目が覚めた。
 どうやら、誰か来ているらしい。
「・・・そう言えば、あかりが学校帰りに寄ってくれるって言ってたっけ」
 て事は、今何時だ?
「・・・・・・」
 時計を見上げると、時間は4時を過ぎた辺りを指して居た。
 そうか、そんなに寝てたのか。
「・・・流石に腹減ったな」
 オレはそうつぶやいて、上に半纏を羽織ると、部屋の外に出た。


 部屋の外に出た瞬間、オレはその異常事態に気が付いた。
 まず、上の階まで漂って来る良い香り。
 そして、下の階から聞こえて来る数多くの人間の話し声。
 少なくとも、あかりだけが来てる訳では無さそうだ。
 しかし、そうなると一体誰が来てるんだ?
 怪訝に思いつつ、下の居間に降りて行く。
 がちゃり。
 そして、扉を開けると・・・。
「あ、浩之さん、起きてもも大丈夫なんですか〜?」
 居間でマルチがテーブルをふいて居た。
「・・・何でマルチがオレの家に来ているんだ?」
「いえ、私だけではありませんよ〜」
「あ、藤田さん」「先輩! 風邪大丈夫ですか?」
 と、台所の方から、皿を持った琴音ちゃんと葵ちゃんが出て来た。
「・・・・・・」
「あら、ヒロ、もう起きても大丈夫な訳? だったら、心配してここまで来て損しちゃったわね〜」
「何や、藤田君、思っとったより元気そうやな」
「志保・・・委員長まで・・・」
「うちらだけやないで」
「Oh! ヒロユキ、風邪は万病の元ネ。おとなしく寝てた方が良いヨ?」
「あ、藤田君、あかりさんに頼まれて、風邪薬買って来たけど、飲む?」
「レミィ・・・理緒ちゃん・・・」
「・・・・・・」
「浩之、寝て無くて大丈夫? 姉さんも風邪薬作って来たけど・・・まあ、効果は飲んで見てのお楽しみって所ね」
「先輩・・・綾香・・・」
「あ、浩之ちゃん、起きて来たんだ。お腹空いたでしょ? コレ、私とセリオちゃんで作った、雑炊だけど、暖かいうちに
食べたほうがいいよ」
「――栄養と、風邪の抵抗力を付けることを考えて、青野菜とたまごも入れて置きました。冷めないうちに、どうぞ」
「・・・あ、ああ・・・」


「しかし、また何でみんなオレのうちに集まったの?」
 雑炊を食べて、かなり元気になったオレは、さっきから頭の中にあった疑問を口にした。
「何で・・・って、みんなして今日の当てが外れちゃったから、ね・・・」
 あはは、と、顔を見合わせて苦笑いする面々。
「・・・当てが外れた?」
「んもう! 相変わらずこう言う事は鈍いんだから! ほら、コレ!」
 そう言って志保が差し出した物は・・・チョコレート?
「・・・ああ、そうか・・・」
 今日はヴァレンタインデーだったっけ。
「せっかくみんながチョコレートを渡そうと思っていたのに、その相手が風邪で寝込んで居るとなっちゃあ、まあどうせ
だからって事でみんなで看病をしようかなぁ〜って、ね」
 うんうんと頷く女性陣一同。
「・・・そうか・・・ありがとうな、みんな」
 この時ほど、彼女たちに感謝した事は無い。
「その代わり・・・」
「その代わり?」
「ホワイトデーは期待してるから」
「ははぁ、善処させて頂きます」


 そして3月14日の前後11日間、オレはこの時のお礼と言う事で1日交代で彼女たちの相手をさせられる羽目になった。
 嬉しいのやら、悲しいのやら・・・。




  − 『続く』 −





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