Episode:オールキャスト?(ToHeart)
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「例えばこんなヴァレンタインとか。
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− 1 − 2月14日。 その日は、朝から天気が良かった。 ・・・が、オレは起き上がる事ができなかった。 なぜなら・・・。 ぴんぽーん。 『浩之ちゃ〜ん、朝だよ〜』 玄関で、あかりが呼んで居る声が聞こえて来る。 が、オレの何も考えられない頭は、その声を素通りさせて居た。 『もう、しょうがないなぁ〜』 そう言って、家の中に入って来る音がする。 最近、あかりはオレが起きて来るのが遅いと、部屋まで起こしに来るようになって居た。 まあそれはそれでありがたいのだが、この前は着替えて居る最中に上がって来て、慌てて着替えたと言う事もあった。 が、今日はそんな事すら出来そうにも無い。 こんこん。 『浩之ちゃん? 入るよ?』 がちゃん。 「あ、何だ、起きてるじゃないの。浩之ちゃん、早く学校に行こうよ」 「・・・スマン、あかり・・・オレ、今日学校休むわ・・・」 やっとの思いで絞り出した声。 あかりも、それを聞いて異常を察知したらしい。 「浩之ちゃん、もしかして・・・」 そう言って、おでこに手を当てる。 ・・・ああ、あかりのてがひんやりして居て気持ちいい・・・。 「・・・! 凄い熱・・・。浩之ちゃん、カゼひいちゃったの?」 「ああ、どうやらそうらしい・・・スマンが、HRの時に伝えといてくれ」 「あ、う、うん・・・じゃあ、私帰りにまた寄るね」 「・・・スマンな」 「ううん、いいよ。それより、今はゆっくり寝て早く治してね」 「・・・ああ、そうする・・・」 「それじゃあ・・・」 ぱたん。 そのまま、オレは目を閉じた。 月曜日から風邪引きなんて、ついてねぇなぁ・・・。 − 2 − ・・・・・・。 ・・・。 どのくらい寝ていただろう。 オレはふと、下の階から聞こえて来る物音で目が覚めた。 どうやら、誰か来ているらしい。 「・・・そう言えば、あかりが学校帰りに寄ってくれるって言ってたっけ」 て事は、今何時だ? 「・・・・・・」 時計を見上げると、時間は4時を過ぎた辺りを指して居た。 そうか、そんなに寝てたのか。 「・・・流石に腹減ったな」 オレはそうつぶやいて、上に半纏を羽織ると、部屋の外に出た。 部屋の外に出た瞬間、オレはその異常事態に気が付いた。 まず、上の階まで漂って来る良い香り。 そして、下の階から聞こえて来る数多くの人間の話し声。 少なくとも、あかりだけが来てる訳では無さそうだ。 しかし、そうなると一体誰が来てるんだ? 怪訝に思いつつ、下の居間に降りて行く。 がちゃり。 そして、扉を開けると・・・。 「あ、浩之さん、起きてもも大丈夫なんですか〜?」 居間でマルチがテーブルをふいて居た。 「・・・何でマルチがオレの家に来ているんだ?」 「いえ、私だけではありませんよ〜」 「あ、藤田さん」「先輩! 風邪大丈夫ですか?」 と、台所の方から、皿を持った琴音ちゃんと葵ちゃんが出て来た。 「・・・・・・」 「あら、ヒロ、もう起きても大丈夫な訳? だったら、心配してここまで来て損しちゃったわね〜」 「何や、藤田君、思っとったより元気そうやな」 「志保・・・委員長まで・・・」 「うちらだけやないで」 「Oh! ヒロユキ、風邪は万病の元ネ。おとなしく寝てた方が良いヨ?」 「あ、藤田君、あかりさんに頼まれて、風邪薬買って来たけど、飲む?」 「レミィ・・・理緒ちゃん・・・」 「・・・・・・」 「浩之、寝て無くて大丈夫? 姉さんも風邪薬作って来たけど・・・まあ、効果は飲んで見てのお楽しみって所ね」 「先輩・・・綾香・・・」 「あ、浩之ちゃん、起きて来たんだ。お腹空いたでしょ? コレ、私とセリオちゃんで作った、雑炊だけど、暖かいうちに 食べたほうがいいよ」 「――栄養と、風邪の抵抗力を付けることを考えて、青野菜とたまごも入れて置きました。冷めないうちに、どうぞ」 「・・・あ、ああ・・・」 「しかし、また何でみんなオレのうちに集まったの?」 雑炊を食べて、かなり元気になったオレは、さっきから頭の中にあった疑問を口にした。 「何で・・・って、みんなして今日の当てが外れちゃったから、ね・・・」 あはは、と、顔を見合わせて苦笑いする面々。 「・・・当てが外れた?」 「んもう! 相変わらずこう言う事は鈍いんだから! ほら、コレ!」 そう言って志保が差し出した物は・・・チョコレート? 「・・・ああ、そうか・・・」 今日はヴァレンタインデーだったっけ。 「せっかくみんながチョコレートを渡そうと思っていたのに、その相手が風邪で寝込んで居るとなっちゃあ、まあどうせ だからって事でみんなで看病をしようかなぁ〜って、ね」 うんうんと頷く女性陣一同。 「・・・そうか・・・ありがとうな、みんな」 この時ほど、彼女たちに感謝した事は無い。 「その代わり・・・」 「その代わり?」 「ホワイトデーは期待してるから」 「ははぁ、善処させて頂きます」 そして3月14日の前後11日間、オレはこの時のお礼と言う事で1日交代で彼女たちの相手をさせられる羽目になった。 嬉しいのやら、悲しいのやら・・・。 − 『続く』 −
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