(Leaf Visual Novel Series vol.3) "To Heart" Another Side Story

for 「本日のお題」

悪夢・・・悪意に満ちた夢

Episode:来栖川 綾香

Original Works "To Heart" Copyright 1997 Leaf/Aquaplus co. allrights reserved

written by NETTLE




           金曜日のオカルト研

「・・・・・・」
「・・・・できたの?これでいいの?」
 浩之は目の前に置かれている茶色の瓶を指さして芹香に尋ねる。
 こくこく
 首を縦に振る芹香
「これでいいのか・・・・」
 さっきまでの実験を思い出しながら不安にかられる浩之。
 抹茶と麦茶の混じった色をした薬、鮮やかなレモン色の粉末、所々変色した白い棒、
そしてそれらを混ぜ合わせて芹香が呪いを施した目の前の瓶。
 よく見ると瓶の外側に六紡星が描かれている。
(これを俺が飲むのか?)
 よせばいいのに、瓶をジッと見つめてしまう浩之。
(これは絶対にまずい。今まで以上にまずい)
 浩之の第六感は警鐘を鳴らしっぱなしだ。
 先輩もどんな薬なのか言ってくれない。
「・・・・・・」
 浩之は何か良い案がないかと辺りを見回す。
(なにかないか?せめて実験を先に延ばすことのできるようなことは・・・・)
「・・・・・?」
「え?どうかしたんですかって?いやちょっとね・・・・」
 芹香の目を避けるように振り返った浩之の目に柱時計が映る。時刻は5時を廻ろうと
している。
「先輩、そろそろ5時になるから続き今度にしない?」
 浩之はさり気なく芹香に尋ねる。
「・・・・・・・」
「え、私もそのつもりだった?」
 浩之は心のなかで神に感謝を捧げた。
「・・・・・・・」
「薬の完成は明日になる?」
 もはや浩之の心の中では万歳三唱が行われていた。
(やった!助かった。)
「先輩、ゴメン。明日大切な用事があるんだ。実験にはつき合えないんだ」
 とてもすまなそうな表情を作ってはいるが、心の中では土下座しながら嘘ついたこと
を謝罪していたりする。
「・・・・・・」
 その心を知ってか知らないでか、先輩は快く浩之を許した。ムリにつき合ってくださ
いとは言えませんから、と。
 このときはさすがにグサグサと心が痛んだ。だが、「あの薬は怖すぎる」と言う思い
も同じくらい心の中にあった。

 とても芹香に心を奪われた人物の心境とも思えないが、想像してみてほしい。
 飲み過ぎると目が回ったり、足腰の力が抜けていく、身体が痺れてぜんぜん動かない
と言った症状の出るような惚れ薬を作る方が、用途も告げずに作る薬を飲むことを。
 さすがの浩之も怖くなったというわけである。

「じゃあ、校門まで一緒に行こうか」
 こくこく
 いつものように何を考えているのかよく分からない芹香とどうやって逃げようか考え
ている浩之は並んで廊下を歩いていった。




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