『Wedding』 あとがき





この作品は当初、「魔法使いな放課後」のエピローグとして構想されたものです。
それが、どんどんイメージが膨らみ、また雰囲気が「魔法使いな放課後」と余りにも違う
ものとなってしまった為、独立した作品として書かれることになりました。
この作品のコンセプトは、「浩之と琴音ちゃんは恋人同士になれるか?」です。そりゃ当
然なれるだろう、とお考えの方がおそらく、ほとんどだと思います。しかし、私の考えは
「難しい」です。
浩之は琴音ちゃんにとって間違いなく「恩人」です。浩之は琴音ちゃんの為に誇張でなく
命を懸けました。そして琴音ちゃんは浩之によって心を救われました。浩之は何の代償を
求めたわけでもありません。一切の打算抜きで、彼女の魂を救ったのです。
二人の関係は決して対等ではありえません。おそらく、浩之はそんなことを気にしないで
しょう。しかし、琴音ちゃんは浩之に対する一種の「負い目」を持ち続けるのではないで
しょうか。いったん恋人同士になってしまったら、浩之にどんな酷い仕打ちをされても彼
女は献身し続けることしかできないと思います。
この二人は、おそらく結ばれてはいけないのだと思います。浩之の行為は無償の愛であり
続けなければならない。そうでなければ、お互い傷つき合う(傷つけ合う、ではありませ
ん)ことになるのではないかと思います。
浩之と琴音ちゃんにとってのハッピーエンドは、お互いが別の伴侶と結ばれることだと私
は思いました。それがこの作品です。別々のパートナーを見つけてなお深い絆を持ち続け
る、それが私にとって理想的なこの二人の関係です。
この作品は、読まれる方によっては「暗い」「哀しい」お話だと思います。ですが、私は
「切なく」それでいて「幸せ」なストーリーとしてこの物語を書いたつもりです。作品の
評価を決めるはあくまでも読者の方ですが、To Heart を愛する皆さんが少しでも
私と同じ想いを共有していただければ、と願っております。

平成10年6月8日
百道真樹

PS
この作中に出てくる「バーチャル・ビーイング」「来栖川サイバネティクス」はマルチの
アフター・ストーリーの設定として考えているものです。形になっていない作品を引用す
るのは反則技もいいところなのですが。一つ、大目に見ていただけませんでしょうか?
このマルチ・アフター・ストーリーももちろん、いずれはSSという形に仕上げたいと思
っております。ただ、少々難しいお話の上、かなり長くなりそうなので・・・完成させられ
るかどうか、我ながら少し心配です。



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