Episode:オールキャスト・of・『To Heart』

「人騒がせな誕生パーティー」


Written by Holmes金谷



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 とある日曜日の昼の事。
 天気が良かったこともあって、オレは出かけたついでに家の近所の公園で昼飯を食って
いた。
 あと何日かしたら連休と言う事もあり、じっとしていると汗ばむくらいの陽気だが、公
園に来ると風が吹いていて、それはそれは心地よい。
「ん〜・・・」
 食べ終わったパンの包み紙をポケットに突っ込み、オレは思いっきり伸びをした。
 あ〜、いい天気だねぇ。
 これはまた、昼寝に丁度いい。
 と言う事で、オレはベンチで横になると、そのまま眠りの世界へと旅立ってしまった。


 ちょんちょん。
 ・・・ん?
 ちょんちょん。
 誰かがオレのことをつついている。
 ちょんちょん。
 ん〜、誰だぁ一体?
 ちょんちょん。
 せっかく人が気持ち良く寝ているってのによぉ。
 ちょんちょん。
 頼む、もうちょっと寝かしておいてくれ〜。
 ちょんちょん。
 だぁ〜っ!もう!
「誰だよ、一体!・・・って、あら?」
 大声を上げて飛び起きると、すぐに目に映ったのはオレの間近5cm位のところでオレ
のことをじっと見つめる来栖川芹香先輩だった。
 もう少し強く飛び起きていたら、間違いなくぶつかっていただろう。
「あ、せ、先輩?」
 我ながら、実にマヌケな言い方をしたと思うが、それくらいこの出来事は驚くべき物だ
った。
 今年の3月、先輩は無事に卒業して行き、名門と言われる某大学に進学して行った。
 それ以来、今日のこの一瞬まで来栖川先輩とは顔を合わせていない。
 懐かしい・・・と言う程でもないが、それにしてもこうして久しぶりに顔を合わせると、
何かちょっとだけ嬉しくなる。
「………」
「えっ、びっくりしましたって? わ、わりぃな。オレ、ついつい寝ぼけちまって・・・
え? 起こしてしまってすいませんでしたって? いやぁ、別に良いけどよ」
 そう言って、オレは体を起こしてベンチに座り直した。
「でも、本当に久しぶりだな、先輩。元気でやってた?」
 こくん。
「そうか、そりゃあ良かった。ところで、今日はどうしてこんな所に?」
「………」
 先輩が何かを言いかけたが、それは別な声で遮られてしまった。
「姉さ〜ん、見つかった〜?」
「?」
 声のした方向を見ると、先輩にそっくりな人が軽やかに走ってくるのが見えた。
「・・・綾香?」
「はぁ〜い、お久しぶりね、浩之」
 目の前で立ち止まりにこやかに手を振るその姿は、紛れもなく先輩の妹、来栖川綾香だ。
 目の前でこう並ばれると、全く同じようで、それでいて違う雰囲気の姉妹。
 もちろん、両方ともすこぶる付きの美人には間違い無いが。
「二人そろって、一体どういう風の吹き回しだ?」
 オレは、先程から頭の中に有った疑問を再び口にした。
「ん〜と、ちょっと用事があってね。さっき電話したんだけど、浩之ったら家に居なかっ
たじゃない? だから、私と姉さんで探し当てたって訳」
「はぁ? そんなもん、オレが家に帰ってからでも良かっただろう?」
「ん〜、まあそうなんだけどね。姉さんが、久しぶりに浩之の顔も見たいって言うからさ、
心当たりを探して回ったのよ。私も久しぶりに浩之の顔見たかったしね」
「・・・そうなの?」
 オレが聞き返すと、先輩は少し頬を赤らめて、こくんと頷いた。
「そりゃあまた有りがたい話だけど、その『用事』って、何だ?」
 新たに沸き起こった疑問を口にする。
 すると、綾香は意味ありげな笑みを浮かべた。
「浩之、今度の連休、ひま?」
「今度の連休?」
「そう」
「ん〜・・・」
 何か用事あったっけ・・・?
 しばらく考えて見る。
 あかりとは別に約束してねぇし・・・雅史とも何の約束も無い。志保はこの際除外して、
と。委員長とも特に約束は無い筈だ。レミィ・・・も、約束とかはしていない。理緒ちゃ
ん・・・とも、約束は無いな。
 他には・・・葵ちゃん・・・琴音ちゃん・・・マルチ・・・セリオ・・・。
 結論。
「特に用事はねぇけど」
 オレはそう答えた。確かに、誰とも約束はない。まあ、今年は受験生と言う事もあって、
家で大人しく勉強をしていようかと考えていた所だ。
「じゃあさ、今度の連休に、うちに来てくれないかなぁ?」
 と、綾香はそんな事を言い出した。
 ちなみに芹香先輩はその隣で黙って綾香とオレとのやり取りを聞いている。
「? そりゃまた何で?」
「い・い・か・ら! 来てくれるよね?」
 綾香の期待のこもった言葉。ふと見ると、芹香先輩まで期待のこもった目つきでこっち
をじっと見つめている。
 ううっ、この目つきには弱いんだよなぁ〜・・・。
 結局、かなり押し切られた形で二人の「お願い」を了承した。
「で、一体何をやるんだ?」
「それは当日のお楽しみよ。じゃあ、待っているからね〜」
 そう言うと、綾香は名残惜しそうな芹香先輩を引っ張るようにして公園を出て行った。
 丁度公園の植樹に隠れるように止めてあったリムジンに乗り込むと、リムジンはタイヤ
を鳴らして急発進して行った。
 運転手は・・・多分あのじじいなんだろうなぁ・・・。
 そんな事を思いながら、オレは家への道を歩き出した。


 しかし、今度の連休って何かあったっけ?
 さっきからそればかりが引っかかっている。
 何か無けりゃあ、わざわざ先輩や綾香がオレを招待するわけがない。
 ・・・が、その「何か」が、さっぱり見当がつかなかった。
「・・・明日にでも誰かに聞いて見るか」
 そう思い、家に帰りかけたその時、オレはある重大な事に気がついた。
「・・・そう言えば、『連休』とは言ったけど、『連休のいつ』ってのは聞いて無かった
な〜・・・。綾香のヤロー、肝心な事言わないで帰りやがって・・・」
 ・・・まあいいか。
 どうせその日が近づけば、向こうから連絡をよこすだろう。
 そう結論づけると、オレは家へと帰った。





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