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 次の日。
 学校へ行く途中、オレは何となくあかりに聞いて見た。
「なぁ、あかり?」
「うん? なあに、浩之ちゃん?」
「あのさ、今度の連休って、何かあったっけ?」
「えっ?」
 少し驚いたような顔をするあかり。
 何だ、そのリアクションは?
「お前、何か知っているのか?」
「えっ、な、何が?」
 必死に隠そうとしているのが、手に取るように解る。
 伊達に長い間幼なじみを続けていた訳ではない。
 あかりがオレの思考を読み取れるように、オレだって多少はあかりの思考が読める。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
 しばらく、沈黙が続く。
「・・・おい」
「えっ? え、え〜っと・・・」
 相変わらず何か隠しているあかり。
 ・・・しょうがねーなぁ、まったく。
「・・・何か言えねぇ理由でもあるのか?」
「・・・うん、ゴメンね」
 本当にすまなそうな顔をして、あかりが謝った。
「お前が謝ることはねぇよ」
 そう言いながらも、オレは不機嫌そうな顔をしていたに違いない。
「あ、で、でも、悪い事じゃないから。心配しないで」
 慌ててフォローするあかり。
「別にそんな事を考えてる訳じゃね〜よ」
 苦笑いしながらオレはそう言うと、学校へ行く歩調を少し早めた。
「あ、ま、待ってよ〜、浩之ちゃ〜ん!」


「おはよう、ふたりとも」
 教室に入ると、雅史がにこやかに近寄って来た。
「よう」
「おはよう、雅史ちゃん」
 挨拶をかわして、オレは自分の席に着く。
「ところで雅史、今度の連休って、何かあったっけ?」
 オレは、あかりに尋ねた事を雅史にも尋ねた。
「今度の連休? 僕は家族と伊豆に潜りに行くけど?」
「あ、そう言えばそうだったな」
 そう言えば、雅史の家は典型的アウトドア家族。せっかくの連休にじっとしている訳が
ない。
「うん、だから他の事はちょっと・・・」
 すまなそうな顔をしてそう答える雅史。
「ああ、別にかまわねぇよ。ただ何となく聞いただけだし」
「ゴメンね」
 き〜んこ〜んか〜んこ〜ん・・・。
 丁度授業開始のチャイムが鳴り出したので、雅史とあかりは席に戻って行った。


 5時間目の後の休み時間。
 教室の外の空気が吸いたくて、何となく廊下に出た時の事だ。
「ヘイ、ヒロユキ!」
 びしばしっ!
「どわっ!」
 一瞬の間を置いて、天と地が反転した。
 こう言う事をする奴は、オレの記憶には一人しかいない。
「レミィ・・・頼むから突き飛ばしは止めてくれって・・・」
 言いながらも思わず目はスカートの中へ・・・。
 おおっ、今日は白地に水色の水玉だ・・・って、そんな事やってる場合じゃねぇ〜っ!
「アハハッ、ゴメンね」
 全く悪びれた様子もなく、オレを助け起こすレミィ。
 助け起こすなら初めからやらなけりゃあいいのに・・・。
「ところでレミィ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「Why? 何デスか?」
「今度の連休、何かあったっけ?」
「レンキュー? Consecutive holidays?」
「・・・? って言うのか? まあ、良くは知らんけど」
「そうデスネ・・・」
 いつもの考えるスタイルでしばらく考えこむレミィ。
「う〜ん・・・」
 次第に表情から笑みが言えていく。
「う〜ん・・・」
 ・・・聞く相手を間違ったかな?
「Sorry、解らないデース!」
 次の瞬間、にこやかに帰って来た返事はこうだった。
「あ〜、そうか。すまんな、レミィ」
「こっちこそ、役に立てなくてゴメンね」
 オレは手を振ってその場を後にした。


 放課後。
 運悪く、今日は掃除当番だった。
 あ〜、めんどくせぇ。ちゃきちゃきとすませてしまおう。

 ・
 ・
 ・
 ・
 ・

 はい、おしまい。
 さて、帰りますか!


 廊下に出たオレを、オカルト同好会の1年生が待ち受けていた。
「藤田せんぱ〜い、今日は同好会に出てくれないんですか〜?」
 今年、どう言う訳かオカルト同好会に3人もの新入部員が入って来た。
 しかもどう言う訳か、来栖川先輩が卒業する時にオレのことを名誉会員扱いで名簿に残
して行ったらしい。
 と言う訳で、最近は事ある毎にこの1年生達に追いかけられている。
 今日声をかけて来たのは、そのうちの一人で、おさげに丸めがねが特徴の女の子だ。
「ん〜、今日はちょっと用事があってな・・・」
「じゃあ、明日はどうです?」
「すまん、明日も駄目だ」
「じゃあ、明後日・・・」
 ・・・いいかげんきりがない。
「解った解った。明後日には出てやるよ」
「わあっ、ありがとうございま〜す!」
「んじゃな!」
 ほとんど逃げるようにして、オレはその場を後にした。


 玄関を出て、歩き出す。
 風がぬるく感じる。でも、不快な感じはしなく、むしろ心地よい。
 いい季節だよなぁ〜。
 一度伸びをしてふと前の方に目をやると、委員長が歩いているのが見えた。
 少し小走り気味に追いかける。
「よっ、委員長」
「? 藤田君?」
「今日、塾だろ? 途中まで一緒に帰ろうぜ」
「うん、ええよ」
 そう言うと、並んで歩き出した。
 委員長は何やら手に本をもっている。
「何、その本?」
「塾のテキストや。今日、模試があってな」
 そう言って見せられた本は、何やら教科書よりも難解そうなテキストだった。
「そうか。大変だな〜」
 正直な感想を口にする。
「まあ、今日の模試は簡単らしいから、気分的には楽やけどね」
「ふ〜ん・・・」
 委員長が言う簡単って、どういうレベルなんだ?
「あ、そうそう。委員長、ちょっと聞きたかったんだけど・・・」
「何?」
「今度の連休って、何かあったっけ?」
「連休? 何かって、行事とか?」
 何かあったっけと言う様な顔をして聞き返してくる委員長。
「あ〜、いや、そうじゃなくて・・・」
「? 何やの、それ?」
 委員長は不思議そうな顔をしている。
 ん〜、この分じゃ何も解らんな。
「あ〜、いや、いいわ。何となく聞いて見ただけだし」
「? そうなん? まあええけどね」


 街で委員長と別れたあと、何か釈然としない物を感じながらオレは家へと帰った。
「綾香の奴、何を企んでいるんだ・・・?」


 結局その日は、連休の「何か」が解らず終ってしまった。
 ま、明日が有るさ。
 そう思うと、オレはさっさと寝てしまった。






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