「うー寒かったぁ」
 ホテルに着いたとき4人は真っ白になっていた。
 叩きつけるような吹雪で見えなくなっていたギャップに足を取られて何度も転んでし
まったのだ。
 周囲にも似たようなスキーヤーがいるのでまるで雪男の集団である。
「これからどうする?」
「とりあえず風呂にでも行くか?」
「そうだね、そうする。」
 あかりも意見に賛成する
「混浴じゃないわよ。」
「残念でしたね、綾香さん」
 浩之が間髪入れずに返す。
 後ろでは葵が声を殺して笑っている。
「それじゃ、綾香さん葵ちゃん。また後で。」
 浩之が手を振ると葵がにこやかな顔で答えた。

「ふぅ、ご飯も美味しかったし、風呂も良かったな。」
 浩之は座布団を枕にごろんと横になる。あかりは座卓の前でお茶を煎れていた。
「そうだね、また来れるといいね。」
「そうだな。また当ててくれよな。」
「え、うん努力はしてみる・・・」
 少し困った顔をしてしまうあかり。人が良すぎるのだ。
「だけどちょっと残念だったね。こんな天気になるんだもん」
 外の雪はまだ降り続いている。多分明日まで続くと従業員のおばちゃんが言っていた。
「次があるさ」
 人生長いんだから、そう続けようとしたところでドアがノックされた。
「やっほー、入るわよ。」
「おじゃましまーす。」
 綾香と葵が入ってくる。手には日本酒らしきものが下げられている。
「いらっしゃい。」
「おーす、ってなんだよその手に提げてるものは!」
 体を半分起こしながら浩之が瓶を指さす。
「綾香さんが持ってけって言うもんだから。」
「そうなのよ、もう後やること無いでしょ?だからゲームでもやろうと思って。」
 そう言うと袋の中からトランプを取り出す。
「トランプをやるのになんで酒が必要なんだ?」
 綾香は顔の前で指を振ると、罰ゲームよと言いきった。
「どっから持ってきたんだ?まさか持ち込んだ訳じゃないだろ?」
「ここの地酒よ。おみやげ用に買ったんだけど・・・まぁいいじゃない。湯飲みもあるし」
 綾香はあっけらかんとして言う。セバスチャンが聞いたら倒れそうだ。
「あかり、おまえ酒飲めるか?」
「うー、少しだけなら。」
 困った顔をしながら答えるあかり。
「よし、何をやるんだ?大貧民か?」
 浩之はもうすでにやる気である。
「それが良いわね。葵、とりあえず席に着きなさい」
 綾香の目も燃えている。十分やる気だ。
「藤田先輩、綾香さん。私の意見は?」
 葵は気が付くと自分もやることになっているのにとまどっている。が、彼女に選択権はない。
「うう、私もやるのね・・・」
 同じく選択権を持たないあかりも覚悟を決めて席に着いた。


 深夜12時を廻る頃・・・
「ふっふっふっふ、まだまだよねぇ」
「とうぜん。まだまだこれからよ。」
 浩之と綾香は元気だ。が、
「うう、もう飲めないよぉ、浩之ちゃんもうやめよ?」
「せんぱい、もうやめましょう?綾香さんも」
 あかりと葵はぐでんぐでんに酔っぱらってしまっているようだ。
「なにいってるの、まだまだよ。そうよね浩之。」
「おうよ、まだまださ。」
 二人ともかなり飲んでるのだがまだまだやめる気配はない。
「あぅ」
「浩之ちゃーん」
 二人の苦難は続く。


 午前二時・・・
「おいあかり、もうそれぐらいにしておいた方が・・・・」
 あかりは茶碗を片手仰ぐように飲み干している。
 今度は浩之の方が青くなる番だった。
(だいじょうぶか?そんなに飲んでも・・・)
「いい飲みっぷりねぇ。じゃあもう一勝負と行きましょうか?」
「おーー、じゃんじゃんいくぜぇ」
 あかりは片手を挙げながら叫ぶ。
「あかりが壊れた・・・・」
 葵はすでにダウンして寝息をたてている。
「こんなんで明日スキーできるのかよ・・・」
 浩之は一人呟いた。




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