〜7月7日(月)〜 そこにある歌


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――システム起動

――データ復旧中 しばらくお待ちください

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――復旧完了

「はぁい、セリオ。おひさ〜」
「――ユーザー登録をお願いします」
「あら、ずいぶんね。私のこと忘れちゃったの?」
「――綾香さん」
「こら、バカモン! ロボットの分際でお嬢様を『さん』付けなどなんたるこ
とだ! ちゃんと『お嬢様』といわんか!!」
「姉さん、それ黙らせて」

こくこく

「は、芹香お嬢様。……はい? 仲良くしなければいけない? しかし、相手
はロボット……は、そんな悲しいお顔を。わかりました。以後『セリオちゃん』
と呼び、人間と同じように接します」
「……長瀬をおとなしくさせるには、姉さんに頼るのが一番ね」
「――………」
「――まあ、そう言うわけだから、これからまた一緒にいてもらいたいんだけ
ど、いい?」
「――はい。かしこまりました」
「――そう、よかった。あっ、紹介が遅れたわね。あたしの姉さん、来栖川芹
香に長瀬…」
「セバスチャンです」
「……だそうよ。よろしくね」

「…………………」

「……え? 何か得意なことはありますかって? でもね〜、姉さん。この子
にはサテライトサービスがあるから、大抵のことは何でもでき……」
「――歌が、歌えます」
「へ? そうなの?」
「――はい」

「…………………」

「……では、歌ってみせてもらえませんか?…ですって。そうね、私も聴いて
みたいわ。いい? セリオ」
「――はい。わかりました」

そう返事をすると、セリオはお腹の前で手を組み、瞼を閉じて、抑揚のある声
でその歌を歌った。



         【 music: オルゴール 〜雫〜 】



            この青空を 見上げてみれば

            今は遠いきみを想う

            目覚めたときに 君とふたりで 

            どこへ行こうかなんて



            赤い夕陽に 包み込まれて

            今は居ないきみを想う

            目覚めたときに 君とふたりで

            なにを話そかなんて



            白い小指を 絡ませ合えば

            ………

そこで、歌声が途絶えた。

「どうしたの? セリオ」
「――………」

そっと自分の左手をみる。

「……いえ、なんでもありません」

彼女はそう言うと、ぎこちなく、微笑んだのだった。



            白い小指を 絡ませ合えば

            今は眠るきみを想う

            目覚めることを きっと信じて

            僕はあすへと生きる










               [ 了 ]



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